【有吉牧場】猿払ヘルパーを経て他の自治体で就農した事例

有吉里生
枝幸町酪農家、猿払村で従業員とヘルパー職員経験あり。

猿払で牧場従業員、酪農ヘルパーを経験し、猿払を出て枝幸町で就農した稀有な経歴を持つ有吉さん。就農を目指してヘルパーに従事している人は多いですが、別の市町村で就農する事例は少し珍しく、そこには少々大人な事情も含めた背景があるのです。
有吉さんには猿払を出て就農するまでの経緯や、現在の暮らしについてお話していただきました。

01就農まで

まずは新規就農までの経緯を簡単にご紹介。

北海道大学を卒業後、猿払村で1年間牧場従業員。ヘルパーを2年ちょっと勤め、結婚の準備に一度北海道を離れ千葉へ行ってきました。その際に、お世話になった関係者に挨拶回りをしていて、枝幸で離農する農家の話をすすめてもらったのが就農のきっかけです。

枝幸でも短期間ヘルパーをし、就農予定の牧場を引き継いで第三者継承という形で就農するに至ります。

02猿払を出る

今回、村外まで取材に伺ったのには理由があります。

自治体に縛られずに選択できることの重要性と、若者の未来を尊重する姿勢を猿払のヘルパー組合は大切にしているからです。若者にとって将来の道は迷うもので、やりたいことや生きる場所がはじめから定まっている人の方が圧倒的に少数です。

選択肢を広げて成長の後押しをするのが猿払流で、有吉さんはその良い例となりました。

ヘルパー組合の構造

実はヘルパー組合というのは、ほとんどの自治体が役場からの補助金を収入の一部としています。当然補助金なので名目があり、後進の担い手や新規就農者の育成など。

さらに同様に農協からもお金が入ってることがあり、これらとヘルパーの利用料を合わせて組合が運営されてます。

ヘルパーとして勤める人物が将来にわたってその自治体の利益となるような人になってほしいという投資ともいえます。だから人材の流出が市町村の損失ともとらえられてしまう心理的な働きはよく理解できます。

しかしこのような公的な機関や組織の都合が、一個人の職業選択や居住選択の自由という憲法にも守られる権利を侵すことはできません。

実際のところ

有吉さんたちは比較的円満に猿払を出て、今でも猿払の農家たちとの交流は続いています。

猿払に戻るのかと思ったら他の町で就農して...と多少の嫌味もありましたが、それは半分は冗談で、個人の意見の範疇でもあります。このような感情が増長して組織の感情として向けられると問題になってしまいますね。でもお世話になった町を離れて直接的に恩を返せない以上、そのような意見や感情がゼロになることはないでしょう。

有吉さんたちは概ね後腐れもなく猿払を出たと思い、今まで受けてきた恩などは次の世代に渡していくことを意識していきたいと語りました。

03就農してから

就農してからは、まず想定したよりもずっとお金がかかりました。まず牧場を買い取るお金、さらに長年営農されてきて老朽化した設備の刷新。具体的には堆肥舎の建設、牛の買い付け、ミルカ―の買い替え、トラクターなど。

とくに就農1年目はトラブルも多く本当に大変でした。

就農4年目となり最近は余裕が出てきました。就農当時から牛の頭数は少し増えたくらいですが、作業時間は半分になってます。今年は例年より早く放牧を開始できましたし、今度は牧柵などの設備にも投資をしていこうと考えています。

最近ではミルカ―を新しく変えたのが正解でした。以前のは古かったので、搾乳効率は上がったし、ミルカ―が変わったことによるストレスもなくむしろ体細胞は良くなりました。

餌は出荷した牛乳の乳成分の速報を見て調整してます。放牧になるとまた変わってくるので、その都度出た結果から合わせています。これも就農してから2年くらい経ってだんだんメニューも安定してきました。

今では時間をとって趣味の鹿撃ちに行ったりもしています。

また、学生が実習に来ることもあるので、その時はまずは大変なことよりも酪農の楽しみを知ってもらってます。入り口は楽しく魅力をたくさん知ってもらって、大変な道を乗り越えていくのは働き始めてからでいいですからね。

酪農は頑張った分だけ自分に帰ってきます。牛は良くなり、収入も増え、時間の余裕も生まれ、ストレスもなくなっていく。酪農に限らず自営業の良い所です。

すべてをいっぺんに追おうとはせずに、少しずつ改善を繰り返していけば年々仕事も生活も向上していきます。

04ヘルパーを経験して

猿払でのヘルパー経験は就農してからもいかされているところはあります。

まず牧場研修などとは違いしっかりと雇用されて働くので、社会人としての責任やマナーなど、人と接する上での付き合いなどを学んでこれたと思います。とくに田舎では孤立すると非常に生活しにくくなるので、ヘルパーのような各所に顔を出せる職業は経験して損はないはず。

そして就農してから実感しましたが、仕事における応用力がついたことです。基本的にヘルパーの仕事は搾乳関連と決まっていますが、酪農家不在で牛や機械にトラブルがあった際など、トラブル時の対応力が問われることがありました。

多くの酪農家の牧場を見て、経営や仕事のしかたの引き出しを増やせること、事例対応の知識が増えるのが大きなメリットです。

そして猿払ヘルパーを出て他地域で就農した私から言えることは、猿払ではそういったしがらみが少ないのも良い所です。やはり行政や農協などの恩を多分に感じていると、そこから出にくくなるというのは分かります。結果的に逃げるように出て行ってしまう若者もいることでしょう。

猿払で就農しなくともそこで関係を絶たずに、別の道やアプローチで繋がり続けていられる懐の深さがある場所だと思います。

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