【組合長メッセージ】小泉浩さんによる猿払ヘルパー組合の展望

小泉浩
猿払村酪農家、酪農ヘルパー組合組合長。

猿払のヘルパー組合はほかの自治体と明確な違いがあり、その特徴を丁寧にお話していただきました。
ヘルパー組合は道内だけでも数十とあります。
北海道移住や新卒で酪農ヘルパーが選択肢になったとき、どの自治体を選んだら自分の働き方に合っているかはふたを開けてみないことには分からないでしょう。
また、広大な北海道ではその土地ならではの特色もあります。
酪農ヘルパーになろうとするかたにとって、猿払村酪農ヘルパー組合がひとつの指針を示してくれるでしょう。

01組合の特徴

猿払村酪農ヘルパー組合では独自の3つの特徴を謳っています。

酪農に興味があり3つの特徴に共感できれば、きっと猿払で楽しく活躍でき、あなた自身の成長にもつながるでしょう。

猿払ヘルパー組合の特徴を簡潔にまとめるなら「学び、遊び、繋がる」これに尽きます。

ヘルパーとして猿払にやってきたのなら、そこでしっかりと成長できる機会を提供したいですし、猿払での生活を楽しんで送っていただきたいです。

①猿払で成長してほしい

日本最北端の村といわれる猿払村は、風土的な事情をかかえています。街は近くになく、生活の便も良くはない、なにより気候も厳しい。しかし裏を返せば酪農に適した風土に恵まれています。普通の人が住んで楽しいといえる場所ではないかもしれませんが、将来酪農関係の職種を見据えているのであれば有力な場所ともいえるでしょう。

だからヘルパー組合としても、将来酪農家になりたいとか、酪農関係の仕事に就きたい人にPRできる地域になりたいと考えています。

若いうちから職業や自分の住む土地を、一生涯という意味で決められる人は多くないでしょう。

酪農ヘルパーを一生の職にしていくつもりの人も少数で、猿払はむしろそういった人の背中を押して足掛かりになってもらうことを強みにしていきたいのです。

その中から何人かが将来的にずっと猿払に残り続ける、あるいは関わり続けてくれる人が出てきてくれたらいいですね。

②学べる機会が多い

ここ最近ですが、猿払のヘルパー組合は積極的に全国ヘルパー研修や、勉強会などに積極的に職員を派遣しています。それ以外にも職員が自主的に学びたいセミナー等があれば、すべてが出張費になるかは協議次第ですが、極力そういった対外的な勉強も応援しています。積極的に外の世界も見てもらって、広く柔軟な視点と思考力をもって本人の糧にしてもらいたいのです。

組合内でも月に一度は職員主催の勉強会を開いてます。さらに、毎月一回職員会議があり、互いに社会マナーを身に着けようという意識で、話し合いや学ぶ機会を設けています。

「猿払の酪農ヘルパー」としてだけでなく、社会人としてもどこでも通用する人となってもらえるよう意識しています。

③繋がりを広げていける

猿払の酪農業界は若い従業員がたくさんいて、若い農家もたくさんいます。そういう若い人たち同士が出会える機会をたくさん作って、活気あるコミュニティが形成されていき、将来的にその繋がりが資産となるように願っています。

楽農塾、共同勉強会、スノーモービルやハンティングなど同じ趣味好きが集まったり。こうした一つのコミュニティから、また別軸の新たな輪が自然と広がって、いろいろな会やまとまりが生まれていくのが理想です。

最初に猿払の風土的な問題として「普通に住むには楽しくないかも」と述べましたが、『普通』ではない、若者がアクティブで遊べる地域になってきていると思います。それがこれまで猿払の人が繋いできた独自のパワーです。

他の地域の研修生やヘルパー同士の交流、学生との関わり合い、大学訪問の講師に一緒に呼んだり、とにかく限られた範囲での関わりだけでなく、いろんなチャンネルと接点も持てること組合となります。

02向いている人

猿払のヘルパー組合の特徴は、どんな形であれ酪農に通じた成長性を意識しています。

そのために猿払のヘルパーとして働くことによる恩恵を最大限にあずかれるのは、やはり活発で人と関わることが好きな人です。

ある程度のバイタリティがないと猿払では楽しめないかもしれません。

ヘルパーは酪農の仕事の中では比較的体力的に余裕のある職種です。とはいえ毎日の仕事をやりながら、なおかつ人と繋がっていくというのはそれなりにエネルギーを要求されます。高い意識を持ち、体力、精神力ともに充実したパワフルなかたに向いています。

ヘルパー経験を無駄にせず、何でもいいので次に繋げるぞという野心を歓迎いたします。

03未経験でも安心

新卒や高卒のかたでは社会人経験すらなく、ましてやいくつもの農家をまわる酪農ヘルパーの仕事に不安を感じるかもしれません。

搾乳バイトなどで実務経験があっても、農家ごとにやり方や方針が異なる仕事に合わせていくのがヘルパー業務の要諦です。

実務面で不安を感じても、業界未経験だとしても問題ありません。

まず猿払には若い仲間が多いことから、ひとつ心理的なハードルを下げてくれます。基礎的な勉強会もよく開いていますし、分からないことは相談してくれれば解決のために積極的に取り上げていくこともあります。

搾乳経験があれば正直ありがたいですが、全くなくてもそこで覚える意思があれば大丈夫です。

ただし、全般的に猿払の農家はアクティブなので、ヘルパーに完全に任せて留守にすることも少なくありません。機械の故障から牛の事故まで全部ヘルパーが任されることもよくあります。

そういう意味では体力と責任が求められるようになってきます。

また、経験者の中には今まで学んできた技術や知識が正しいという思い込み(プライド)を持つ人も一定数おり、そういった人は最も苦労するかもしれません。

はじめは研修もつきますし、まず素直な姿勢で仕事のやりかたを吸収していってください。

04目指してる未来

猿払村ヘルパー組合の特徴と、どういった人が猿払でのヘルパーに適しているかを述べてきました。ここからさらに踏み込んで、組織としての今後のヘルパー組合の展望もお伝えできればと思います。

アソシエーションとコミュニティ

会社とは本来、利益追求という共通目的のもと作られる集団です。それは契約であり決まりや報酬で人を繋ぐもので、これをアソシエーションと呼びます。ヘルパー組合でも当然決まりがあって、労働契約も結んで雇用することになります。時間外労働、休日出勤やシフトの変更、緊急時の対応など、働いていると予期せぬ出来事はよくあります。

そのときにアソシエーションは働く人の権利を守ってくれますが、それだけを主張すると社会がうまく機能しなくなる場合もあるのです。

例えば農家が急病の緊急時、ヘルパーが全員休みだった際に「休みだから行けません」は権利としては認められます。するとたちまち崩れてしまうのがコミュニティです。

逆にコミュニティを偏重しすぎると、アソシエーションがおざなりになっていくでしょう。

健全な組織体制を維持することと、各個人が柔軟な助け合い精神をもてる相互扶助のバランス。とくに田舎のようなある程度エリアの限定された世界では非常に重要な舵取りになるでしょう。

功績と課題

昨年はヘルパー緊急が多かったのですが、目標としていた組合職員だけで対応できました。ヘルパーが個人の都合を差し置いても、困ってる農家のために頑張った、つまりコミュニティとしての機能が果たされたともいえます。そして農家もヘルパーを労ってくれる関係性が、若い人にとってのモチベーションになり仕事の楽しさと成長を感じられるのです。

一方で課題も残っていて、農家への対応がプロとしての品質を保てていたかにあります。ほとんどの職員が1年目で、お金を払ってヘルパーを依頼している農家にとって満足できるサービスを提供できたとは言い切れません。

プロとしての仕事と、仲間との助け合いのバランスを意識して、目標を持ちながら向上していきましょう。

この背中がすべてを語っています

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