【花﨑牧場】酪農ヘルパー経て新規就農した夫婦が語るヘルパーの強みと魅力

花﨑福・花﨑ゆりあ
猿払村酪農家、夫婦共に元酪農ヘルパー。

猿払村酪農ヘルパー組合に4年勤務し、主任まで勤め上げた花﨑ゆりあさんにヘルパーの経験が現在どう活かされているかをお話をうかがいました。
また同じく猿払で2年ヘルパー経験のある、花﨑福さんに新規就農して1年目の牧場についてご紹介いただきました。

01猿払でヘルパー

取材当日に生まれた仔牛と花﨑ゆりあさん

花﨑ゆりあさんは4年間ヘルパーを勤めていましたが、農業に携わる仕事の中で社会人として成長するのに酪農ヘルパーは最も適していると語りました。家族経営が多い農業では会社や組織としての認識が薄いので、それ故に従業員との温度差を感じる事例もあるようです。

ヘルパー組合は組織として休みも、ボーナスもしっかりと定められていて、畜産業の中でもサラリーマンに近い感覚で働けるのは一つの安心材料です。ましてや新卒や高卒では、社会のマナーや振る舞いも未熟なので酪農ヘルパーは社会人としての素養も成長しやすいでしょう。

ヘルパーのメリット

組合に加盟している農家何十軒と牧場を見て現場につくので、自然と他と比較するようになってきます。ある農家さんのこういうやり方が良いなとか、逆に悪い部分も見えてきたり。自分が就農したら、そういった多くの農家の良い面を取り入れて、悪い面を同じ轍を踏まないように学習できますね。

もちろん仕事の良し悪しはその農家のこだわりや現場の事情によって異なりますが、同じ作業を通しても多くの事例を見れることは確かです。

もう一つ、やはり多くの農家と知り合うことができるので、田舎のような地域社会においてヘルパーはかなりアドバンテージのある職業ではないでしょうか。私たちがこの地域の農家さんたちを知ること、逆に地域のかたたちに私たちを知ってもらうこと。こうして接点を多く持つことは、農業にも限りませんが、社会人として後々大きな財産になってくると思います。

ヘルパーのデメリット

基本的にヘルパーの仕事は搾乳、餌やり、除糞等がメインです。仕事の範囲が限定的なので、端的に言えば単調な作業のように感じられます。要するに牧場全体を見渡した変化や、牛周り以外の技術や知識が身に付きにくいです。

牧場経営という視点で一貫して知見を得るなら、従業員のほうが向いている場合が多いでしょうね。

主任として

主な仕事はトラブル対応や緊急対応でした。農家からの電話で身内の不幸による緊急や、ヘルパーが設備を壊したクレームだったり。農家とヘルパーの中継役といったイメージです。

通常業務よりはプレッシャーもありましたが、事務局が中に入って取り持ってくれたりと支えていただきました。

現場にあたるヘルパーの割り振りなどは主任の仕事だったので、仕事のしやすさなどで調整ができるのは楽しいところです。もちろん責任が増えるぶん手当ても出るので、きちんと評価されるようになっています。

02就農までの経緯

ヘルパー従事数年を経て、就農の話が舞い込んだふたり。

話を聞いてみると、絶対に就農してやるといった強い意思よりも、自然とタイミングや運を引き寄せて就農にこぎつけたような印象でした。その就農までの経緯を夫の花﨑福さんに語っていただきます。

経緯

出身校は「学校法人愛農学園農業高等学校」です。当時は酪農ヘルパーなんて考えてもいませんでした。

先にゆりあさんが卒業し道内の牧場で2年間従業員を勤めていました。後に猿払のヘルパーを4年勤め就農に至ります。

一方で福さんは2つ年下なので2年遅く卒業し、その2年後に猿払へ来てグレースファーム従業員とヘルパーを経験しました。

同じ出身学校がふたりを猿払で引き合わせてくれたようです。

とにかく効率経営

牛舎で搾乳作業の傍らお話を伺いました。その仕事ぶりは軽快で、手足を動かすように首尾よくこなしています。 牧場経営はとにかく「効率化」を意識。

つなぎ牛舎でミキサーを使っているところは少ないかもしれません。餌はTMR、育成は委託で、細々とした日常業務もなるべく機械を使って作業をします。

だから仕事が速くて、夕方は2時間もかかりません。70頭搾りで2時間たらずはあまりないと思います。 効率化された牧場は一人で作業をしても負担を抑えられます。生まれたばかりの子供もいますし、家庭のことも考えて生活面にもしっかり時間をとりたいと語る福さん。

妻は牛とか動物を見るのが好きなので繁殖担当してもらったり、常に牛の変化に気づいてもらってます。僕は力仕事とかをばんばんやるので、夫婦でうまく分業体制のような形もとれてますね。

人と地域に支えられた

就農1年目ですが順風満帆に走り始めました。

以前の牧場主からスムーズに経営を引き継いだことや、地域のかたに支えられているのが大きいです。繁殖や病気で苦労することもありませんでした。夏は猿払も暑くなってきたので乳房炎が増えましたけど、これはどこの農家も同じでした。冬はまったくいないですね、牛たちもみんな健康です。

とくに今年は良い草が多くとれたのですが、機械利用組合の中でも一番最初にやらせてもらったおかげです。就農する前にヘルパーとしていろいろな人と関係を築いておいたことと、シンプルに地域の方々が仲良く助け合いでやってくれたことですね。

お互いの協力関係が築いていける環境があるのも猿払の魅力です。もちろんその縁を手繰り寄せるのは本人次第でもありますけどね。

03まとめ

花﨑牧場の放牧された牛たち

最後に酪農ヘルパーとして働くことを考えているかたにメッセージをいただきました。

ヘルパーはまず体力があれば難なくこなせると思います。難しい作業があるわけでもないので、むしろ余った時間をどう有効に活用していくかじゃないでしょうか。僕はまず人が好きなので、仕事とは別に農家のところに遊びに行ったり、手伝いに行ったりもしていました。

ヘルパー経験は技術的な面はもちろんですが、やはり人との繋がりが大きい。仕事を通じて認めてもらうこと、地域に受け入れてもらうことがなにより大切です。

自分たちも就農してからはヘルパーにとてもお世話になっています。冬のスノーモービルのシーズンになると、毎週のように利用している時期もあります。


愛農学園出身のパワフルなおふたりですが、決して体力と勢いだけではありません。自分たちの人生にとって何が大切かを見極め、そのために夢を抱えながらどう行動し、人との関係をどれだけ築いていくか。これらを大切に淡々と日々の仕事に向き合ってきた姿勢がうかがえました。

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